映画「八甲田山」イラスト、Corel Painter 2021で着色完了。
劇中、高倉健さん演ずる徳島大尉が率いる弘前歩兵第三十一連隊の雪中行軍で、軍歌「雪の進軍」を歌うシーンが大好きです。
良い感じに編集されたこの動画がお気に入り。
キャプションの明るい笑顔の徳島大尉は、実は遭難中の神田大尉(北大路欣也さん)の願望による幻影です。この二人が生きて八甲田山で会う事はありませんでした…。
そしてこの「雪の進軍」。明るい曲調にも関わらず、内容はあまりにも具体的で悲惨。
以下、Wikipediaより歌詞を引用。
「雪の進軍」(ゆきのしんぐん)は、従軍軍楽隊員であった永井建子(ながいけんし)が日清戦争時に作詞・作曲した日本の軍歌。兵士の心情を生々しく綴った歌詞が特徴の歌である。
- 雪の
進軍 氷 を踏 んで何處 が河 やら道 さへ知 れず馬 は斃 れる捨 てゝもおけず此處 は何處 ぞ皆 敵 の國 儘 よ大膽 一服 やれば頼 み少 なや煙草 が二本 燒 かぬ乾魚 に半 煮 え飯 に
なまじ生命 の ある其 の内 は堪 へ切 れない寒 さの焚火 煙 い筈 だよ生木 が燻 る澁 い顏 して功名 談
「すい」と云 ふのは梅干 し一 つ着 のみ着 のまゝ氣樂 な臥所 背嚢 枕 に外套 かぶりゃ背 の温 みで雪 融 けかゝる夜具 の黍殻 シッポリ濡 れて結 びかねたる露營 の夢 を月 は冷 たく顏 覗 きこむ命 捧 げて出 てきた身 ゆゑ死 ぬる覺悟 で突喊 すれど武運 拙 く討 ち死 にせねば義理 に絡 めた恤兵 眞緜
そろりそろりと首 締 めかゝる
どうせ生 かして還 さぬ積 もり
特に4番の歌詞が、まさに日本人の特徴を捉えていると思います。
『武運拙く、死ねなかった。おめおめと生き残ってしまった。
ああ、義理にからめた慰問の真綿がそろりそろりと首を締めにかかる。
どうせ生きて還すつもりはないんだよな。』
…的な解釈です。おっそろしいたらありませんね。大日本帝国の魂ですね。
流石にこの歌詞は戦意を削ぐとのことで、太平洋戦争時代には歌唱禁止になったそうです。
この曲の私的キーワードは「義理に絡めた恤兵真綿」。
出ました、我々の大好きな「義理」ですよ。
先月から読み進めている本、ルース・ベネディクトの「菊と刀」の中で、日本人の根底にある物として「恥」「恩」「義理」が、これでもかと言うほど挙げられています。
本来、自分自身の命を守ることが生命の本能なはず。
しかしその本能を凌駕するほどの「義理」と言う名の重み。いやはや恐ろしい。
勿論時代の特性もありますし、集団心理も働くでしょう。
しかしながら、この「義理」に囚われて身動きがとれなくなる経験は、誰しも一度は経験したことがあると思います。
まさに今、「義理」やら「恩」に足元をとられ、「恥」ることに恐怖を抱き、動けないでいる方もいらっしゃることでしょう。
我々日本人の最奥に根付いた文化は、おいそれと拭えるような物ではありません。
でも時代は変化してきているので、少しずつ自分らしさを取り戻せたら良いですけどね。
時々「雪の進軍」を口ずさんでいます。