前回アップした『神々の山嶺』の模写が完成しました。
前回アップ時から、やっぱり気になって谷口ジロー先生作画のコミックスも、kindleで全5巻購入。読了。
…いや、何とも濃い。濃すぎる内容でした。恐ろしい。
孤高の登山家、羽生丈二(49歳)は前人未到のエベレスト南西壁冬季無酸素単独登頂を目指し、己の人生をかける。まさに命を削る。恐ろしいほどの執念。悲しいほどに山しかない人間。
そんな羽生丈二を追うカメラマンの深町誠(40歳)。現状に煮詰まり今後の人生の転換に迷う中で羽生に出会い、羽生に影響され魅せられ、己の山を追い求めるようになった深町。
ここにジョージ・マロリーのカメラ、エベレスト登山の謎が絡まって、様々な楽しみ方が出来る素晴らしい物語となっています。
何が濃くて苦しいかって、メイン人物の羽生と深町。二人とも40代。まさにミッドライフクライシスど真ん中の世代。私自身、ミッドライフクライシスど真ん中な為、この歯がゆさと苦しさともどかしさには共感しまくりです。
全盛期はとうに過ぎたけれど、まだ自分の成すべき事を成し遂げられていない羽生。年齢だけでなく全ての条件的に今が最後のチャンス。崖っぷち。
深町は深町で、クライマーとしては頭打ち。恋人ともうまくいっていない。けれど何かまだやり遂げられていない。ミッドライフクライシスの状態。
そんな二人がもがき、あがき、それでも最終的に山に魅せられ山に登る。
この一連の様が、本当に苦しい。進めば進むほどに酸素が薄くなる、そんな感覚を味わいました。けれど清々しさもある。だからまた登る。
羽生が何故山に登るかを深町に語った言葉が印象的です。
「そこに山があったからじゃない
ここにおれがいるからだ」
コミックス『神々の山嶺 4巻 P86』より引用
このシンプルな答え。清々しくもあり、呪いの様でもあります。
多分登山家にとっては、問うだけ無駄な質問なのかもしれません。
アニメ映画も素晴らしかったけれど、漫画を読むと大分内容を端折ったりシンプルにしたんだなぁと感じました。
夢枕獏先生の原作小説は未読ですが、おそらくより濃い内容なんでしょうね。
…ちなみに2016年の実写映画は、あまりの評価の低さに未視聴です。
去年の冬には映画「八甲田山」のDVDを買って観ました。何故か冬は、冬山関係の作品が見たくなります。冬も雪も山も苦手だけれど。
自分も不完全燃焼なミッドライフクライシスど真ん中。私にもまだ何かあるだろうか。
絵に対して、色々な視点と姿勢で関わっていく事が課題なんだろうか。
人生の最後、「私が在るから、描くのだ」くらいの言葉が、すーっと出てくる様になっていると良いな。生ぬるいかな。