流線型の鋭角

ミッドライフクライシスど真ん中。イラストと偏った人生観をつらつらと。

映画『生きる』感想

黒澤明監督の映画『生きる』を観ました。主人公渡辺を演じる志村喬さん。

『つまり、このわしは、何か…何かしたい!』

 

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生きる

以下、ネタバレありの、自分的あらすじと感想。

 

胃癌で余命数ヶ月と知った、冴えない中年役場課長、渡辺。

絶望するも、相談できる相手もいない。今まで死んだように生きてきた事を悔い、自分には何かあるはずだ!と、散財、夜の遊びと迷走するも見つからない。

焦る中、元部下の天真爛漫なトヨに生命力を見出す。…が、自分はどうしたら良いか分からない。焦りの中、トヨの発した『課長さんも何か作ってみたら?』の言葉に閃く。

役場内でたらい回しにされてきた案件、地域住民の望みである『公園を作る』事こそ、自身が最期に命をかけて行う事だと悟る。

…その後、一気に渡辺の通夜シーンに突入。渡辺は自身が手塩にかけた夜の公園のブランコで、一人静かに息絶えていた。

通夜には渡辺に関わった役場の面々が揃い、各々の記憶を語る。その中で、渡辺が自身の死を悟ったうえで、命がけで公園を作り上げた事を知る。

そんな渡辺に触発されたメンツは、明日から自分たちも変わるのだ!と誓い合う。

…が、翌日からいつも通りのお役所仕事に戻る面々。人はそんなに簡単に変われない。そこまで切羽詰まっていないから。まだ自身には他人事だから。

でも渡辺自身は、自分自身の最期に納得出来た上で、旅立ったんだろうと思います。

周りがどう思うか、ではなく、自身がどう生きたいか。死期が迫るほどに『今ここ』に集中して生きる渡辺の姿は、鬼気迫るものがありました。

上記だけ読むと、やたら重たい映画を想像しますが、実際はテンポよくコミカルに話が進みます。良い意味で皮肉もたっぷり。1952年の作品ですが、人間の本質は68年前と大して変わらないものです。仕事も親子も生き方も。

名言も多いですが、私がグッときたのはイラストにも書いた以下の言葉。

『わしは人を憎んでなんかいられない。わしにはそんな暇はない』

余計な物が無いから、全身全霊で今を生きている。清々しい限りです。

下にYouTubeのリンクを貼っておきます。あらすじもあるし、予告編のみ無料で観られます。『これじゃない。これでもない。』と言う渡辺の焦りは、ミッドライフクライシスの私にとって他人事ではありません。どれなんだ???

…私はひとまず、今の仕事が自信を持ってできるようになる事、イラストを描き続ける事。できればそこに『楽しさ』を自然に感じられる事が出来たら十分なんだろうな。

色々考えさせられる良い映画でした。

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