流線型の鋭角

ミッドライフクライシスど真ん中。イラストと偏った人生観をつらつらと。

南直哉氏 『禅僧が教える 心がラクになる生き方』

恐山菩提寺院代、曹洞宗 禅僧の南直哉氏。下絵から仕上げまでCorel Painter 2021使用。

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南直哉(みなみ じきさい)氏

南直哉氏著、『禅僧が教える 心がラクになる生き方』kindle版で読んで凄く良かったので、本でも買いました。

 

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自己啓発系の本は、基本的にポジティブ推奨!たった1度の人生、悔いなく生きる!人生に意味を!…的な、熱いものが多い印象です。

しかしこの本は前提が真逆。

第一章の見出しから、『「自分を大切にする」ことをやめる』と切り出しています。

この時点で受け付けない人も多そうです。しかし、2017年初版のこの本が、現在12万部突破していることから、南直哉氏の考えを必要としている人の多さが伺えます。また、そういう時代なのかもしれません。

著書の南氏は、幼少期より小児喘息の為に入退院を繰り返したそうです。激しい喘息発作を繰り返す中、生よりも死をリアルに感じ『自分とは何か』と、常に疑問に思っていたそうです。…壮絶。

そんな南氏を救ったのが、中学3年生の時に読んだ『平家物語』の『諸行無常』という言葉。この言葉を南氏は『生きること自体に意味はない』『自分の存在に確かな根拠はない』『人の存在には確固たる根拠などない』と捉え、「助かった!」と感じたそうです。なぜなら、自分と同じ苦しみを抱える人がいたと感じたから。

仏教の言葉、『一切皆苦』。この世のすべては苦であると、釈迦が説いた言葉だそうです。

南氏もおっしゃっていますが、この観点から人生を見た場合、救われる人間が確かに存在します。本文から引用すると、

『人生とは苦しいものではないのか』『自分とはもともとダメな人間ではないのか』と薄々感じていた人たち。

まさに自分に当てはまる言葉でした。だから私も「助かった」と感じました。

スタート地点がマイナスなんだから、まず0地点に到達するのにも一苦労なんです。

何より自分は駄目人間。これが根底に染み付いた人間には、前述したポジティブ神話やら競争による成功やら、そういったキラキラギラギラしたものは、刺激が強すぎるのです。自転車に普通自動車のエンジンを載せても、自転車本体が壊れて終わりです。そんな感じ。

以前アップした『深海魚の気持ち …と『深く潜れ』』でも同じような事を書いたと思います。

 

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こんな後ろ向き前提の人間にとっては、南氏の説かれる

『人は自分で望んだわけでもないのに生まれてきて、何の根拠もない人生を生きていかなければならない』

『自分というものに対して居心地の悪さを感じるのは当然』

『人生を“棒に振る”くらいの気持ちで生きれば、ちょうどいい』

 

といった言葉の数々は、とてつもなく安心できるし、救われるのです。

日常の場面で感情が揺らいだ時にどうすればいいか、具体的に行動や思考の例が書かれているので、実践にも役立ちます。

繰り返しますが、この本の思考は、合わない人にはとことん合わないでしょう。(…多分うちの両親にはとことん合わない)

逆を言えば、合う人にはとことん合う。決して突き放しているわけではないからです。

意義ある人生を送らねば!…といった事からは、私は一旦離れてみます。

 

『「大切な自分」や「本当の自分」、「夢を叶えて生きる」といった妄想から降りて、他者との関わりの中で成立している自分の存在を見極めることが大切です。

 そこを目指していけば、「生きているのも悪くないな」「生きていて良かったな」と思える日々が重なっていくはずです』

南直哉著 『禅僧が教える 心がラクになる生き方』より引用