流線型の鋭角

ミッドライフクライシスど真ん中。イラストと偏った人生観をつらつらと。

ビョルン・アンドレセン 映画『ミッドサマー』と『ベニスに死す』より

アリ・アスター監督のホラー映画『ミッドサマー』より、ビョルン・アンドレセン演ずる老人ダン。

ビョルン・アンドレセン 老年期

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『ミッドサマー』はめちゃくちゃ面白かったです。

青い空に美しい花々、真っ白な服、可愛らしい刺繍…。明るく美しいものに囲まれているのに、次々と行われる不可解な惨殺。村全体がある種の新興宗教団体なので、我々にとっては異常な事も、彼らにとっては自然な事。この乖離が恐ろしい!

グロテスクな表現が大丈夫な方にはお勧めです。

 

そして!私にとってこの映画の重要ポイントは、イラストに描いたビョルン・アンドレセン。このブログで何回か取り上げていますが、彼はかつて世紀の美少年と謳われた伝説の人です。

ビョルン・アンドレセン 少年期 (珍しく色鉛筆画)

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いつ見ても神がかった美しさ。しかし、この『ベニスに死す』に出演後、ビョルン・アンドレセン自身は性的搾取されたり、世間からの好奇の目にさらされたり、かなり苦労したそうです。…美しさによる弊害とも言えますかね…。

そんな彼が。2019年の映画『ミッドサマー』で老人役として出たのは、『ベニスに死す』に対するアンチテーゼとも思えました。

清々しいほどの老人っぷり!素晴らしい!!

ビョルン・アンドレセン 今昔比較資料

『ベニスに死す』の主人公、アッシェンバッハは、ビョルン・アンドレセン演ずる美少年タッジオに狂おしいほど惹かれます。彼の若さと美しさに魅了されればされるほど、自身の老いと醜さが情けなくて仕方がない…。そんな彼を見ている視聴者もまた苦しくて仕方がない…。

『ベニスに死す』は、観る年齢によって感情移入先が変わります。20代~30代前半で観た時には、若さに執着するアッシェンバッハが不気味でした。しかし30代後半以降に観ると、まさかのアッシェンバッハ目線になっている自分に気が付くのです。ああ、若さって貴重だったんだなぁ…。失ってから気づくのです…。

もしもアッシェンバッハが現在のビョルンを見たら、絶望とともに救いと安心を得られるんじゃないかな。どんな若者も必ず老いるという現実に救いがあると思うんです。

これから老年期を迎える人間にとっても、これまた救い。抗えないものは抗えない。

人は必ず老いて死ぬ。

…頭で分かっていても、ふとした瞬間に自身や身内の老いを感じ、どうにも悲しい気持ちになる。いつまで経っても未熟な物です。

ともあれ、どの世代のビョルン・アンドレセン氏も素敵である事に変わりはありません。これからの活躍にも期待しています!

 

お題「ゆっくり見たい映画」